2008年9月10日水曜日

『間違いだらけの農業政策』

 文藝春秋10月号は、「石油・食料危機、常識のウソ」という特集を組んでいる。
そのなかにある、神門善久『間違いだらけの農業政策』は、この問題になると必ず唱えられる、食糧自給率とか、減反とかのお題目に、私たちは騙されていると指摘する。以下に彼の書いていることの概要をまとめてみた。

- 国際的な食料危機について
・ここ数年の穀物値上がりを、世界規模の食糧危機に結びつけていうのは短絡的。
・ここ2,3年の価格急上昇は、先進国のエゴの結果。
・アメリカ、EUなどが自国の農業を保護するために、途上国の穀物生産を押さえ込む政策をとった結果。
・またバイオエネルギー需要を急増させてのも先進国の都合。
・中国・インドなど新興国の需要増は今に始まったことではない。そのせいにするのはおかしい。

- 日本の食糧問題
・海外からの輸入農産物に押されて自給率が下がったというのはウソ。
・主要農産物についての自由化は、ここ十年来行われていない。輸入に押されて食料生産が減少しているのではなく、日本の農民が自主的に生産を止めているから。
・真面目に米作りに取り組んでいる農家は、285万戸の農家のうち、わずか7万戸。
・大部分は、零細な農地を持つ、サラリーマン兼業農家。彼らの一部が優良農地での耕作を放棄している。
・彼らは農地の土地転用による現金収入を待っている。「転用期待」が、日本の農業を歪ませている最大の原因。
・減反を止めれば、米生産が増え、食糧問題が解決するというのは幻想。実際問題として、減反そのものが形骸化している。
・規制緩和による企業参入は解決策にならない。「仮登記」などの手段で、企業参入は事実上進んでいる。それが農地の農外転用の手段となり、かえって日本の農業を停滞させている。
・農地転用をきちんとコントロールし、農地が真面目な農業者による農地に使われるようにすることが大事。

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