2008年9月9日火曜日

蒸留した焼酎に毒素は混入するのか

 事故米という、農薬やカビ毒が混入した米が、焼酎に使われたというので、製造元、販売業者、そして消費者を巻き込んで大騒ぎなっている。私も芋焼酎や麦焼酎などを愛好しているので、人ごとでない。

 本来このような食品に使っていけないはずの事故米をごまかして流通させることで、結果として人が口にする食品・飲料に入ってしまった。それはそれで問題であるが、製品としての焼酎にどれだけの有害成分が含有されているのだろうか。焼酎は蒸留酒である。発酵させた原材料を加熱して蒸発し、早い段階で蒸発してくる成分を凝集する過程(蒸留)でできた酒である。この過程で、沸点の低い成分は蒸留酒に混入し、濃縮される。他方、沸点の高い、なかなか蒸発しない成分は蒸留酒には混じらない。いま問題になっている毒の成分は、どちらなのか。そういう科学的議論なしに、焼酎そのものに毒が混じっているかのように騒いている。

 私は芋焼酎好みである。芋焼酎はサツマイモから作られているのだから、米の問題とは無縁だと思っていた。ところが、芋を発酵させるもとになる麹に、米が使われたらしい。それにしても、蒸留する原材料に占める米はわずかなものだろう。さらにその米が100%、事故米ではあるまい。何段階かの流通過程で、事故米が混ぜられたらしい。

 事故米が原料に用いられたこと自体、問題であるが、有害成分が、どの程度蒸留物に混じっているのか。そもそも蒸留という過程で、製品としての焼酎に混入するのか、しないのか。どの程度か。市販される製品がほんとうに毒で汚染しているのか。分析機器で検出されるほど毒成分が入っているのか。飲んだ場合、人体にほんとうに有害なほど含まれているのか。そういうことがいっこうに話題にされることなく、大量の製品の回収騒ぎになっているのが分からない。

 焼酎は甲類と乙類がある。甲類は連続蒸留法で、ほとんど不純物のない純アルコール成分が蒸留から得られ、アルコール濃度を水で割ることで調整されたものである。乙類は単式蒸留という、一回蒸留で作られる。材料に含まれる香り成分などが、蒸留成分に混入することで、独特の風味が加わり、その風味と味わいが焼酎愛好家を楽しませる。その風味の中に、問題の毒成分が加わるのか、そうではないのか。専門家は知っているのではないか。知らないとしても、分析器にかけてみれば分かることで、そんなに騒ぐことはない。

 飲み助は、意地汚い。100%ピュアなど望んでいない。もともとアルコールは少々毒と承知の上で飲んでいる。未知の地へ行って、多少いかがわしい飲み物でも、平気で飲む。いやむしろその機会を稀有のものとしてありがたがる。アルコール禁止のパキスタンの僻地、フンザとかチトラルの谷で、自家醸造のワインと称するお酢とも酒ともつかぬ飲料を飲んだことがある。ヴェトナムの焼酎では悪酔いした。タクラマカン砂漠のフータンでは、マオタイに似たすごくアクの強い酒を飲んでみた。日本でも、近くのファームで手に入る粕取り焼酎を、その臭さに辟易しながらも時おり口にする。この粕取りは、戦後の闇市で売られていたカストリとは別の珍品である。

 こんな愚にもつかぬ事を書いて、つい、その気になり、ひさしぶりにその粕取りのボトルを取り出した。おお、臭!

【08/9/13 追記】
 その後、事故米(汚染米)の不正食品転用は、つかみかねるほどの広がりを見せ、官庁の監督責任、米流通業者のモラルのなさなどが大問題となっている。私が書いたのは、その問題はそれとして、焼酎が汚染されているか、という科学的側面であった。しかしこういう場面では、汚染されているかどうかというようなことを、当事者も第3者もあえて口にすることなどできず、風評被害への対応に追われているのだろう。

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