2008年10月1日水曜日

サツマイモと芋焼酎

 連れ合いはサツマイモを好む。私は嫌いである。好き嫌いはほとんどないほうだが、サツマイモとカボチャは別である。戦後のひもじい時代に、家庭菜園でできた質の悪いサツマイモやカボチャを、いやというほど食したからである。折につけて書いたり、話したりしたことがあるので、またかと思う読者もいるかもしれないが、勘弁してほしい。一生分をその時期に食したので、もう食べたくない、食べる必要がない、と何度もいいたいのだ。

 サツマイモは今がシュンらしい。連れ合いは、まいど芋をふかして、それをうまそうに食べる。「たべない?」と、「いやだ」と私が応じるのを承知の上で問う。意地が悪い。このところ、この定型的問答がくり返される。

 私にも対抗策がある。芋焼酎だ。これならいい。サツマイモを原材料にしているとはいえ、焼酎となると別である。昔習った生半可な英語知識でいえば、"made of" は駄目だが、"made from" なら許せるということだ。アルコール飲料はそれぞれに好きであるが、なかでも芋焼酎は好みである。さっぱりして、サツマイモの匂いがして、少々甘味のあるものを好む。あれこれ試してみたが、高級な(高価な)ものは、サツマイモの匂いがあまりしないので、好みではない。安物がいい。好んで飲んでいたのは、マイナーな銘柄である。「やまや」という量販店が、自店ブランドとして売っていた「浦」というもの。過去形で書いたのは、最近入手できなくなったからだ。このブランドになじんだ最初のころは、たしか福島県郡山で醸造していた。芋焼酎とは関係のない生産地だが、どこかで収穫した焼酎好適種のサツマイモ「薩摩黄金」を原料にして、依頼醸造しているということだった。それがいつの間にか、気がついたときには、中国産となっていた。それでも気にしなかった。味と匂いに変わりがなかったからである。

 それを中国産と知った連れ合いが、それを飲むのはよくない、というようになった。おかしいじゃない。サツマイモを食えというのに、サツマイモを原料とし、サツマイモらしい匂いがする「浦」はやめておけという。中国産食品にあれこれの問題が生じるよりずっと前から、連れ合いは中国産をうさんくさいと考えているようだった。私は大量に食べたり飲んだりするわけではない。かまわないという考えだった。

 しかし毒入りギョウザ事件が発生し、中国産野菜を中国人でも洗剤で洗ってから食べるという報道を聞き、つい最近ではメラミン入りミルク製品などとなってくると、中国産芋焼酎も何かがはいっているかな、と思うようになった。私がうまいと思っていたのは、何かの巧妙な添加物のせいかもしれない。

 じつは「やまや」は自社ブランド「浦」を扱わなくなったようだ。最初は、大々的に売っていた「浦」は、片隅にひっそりと置かれるようになった。それでも好きなので、苦労しても捜し出して求めた。しかし、このところ店頭から消えた。

 こうして、私の芋焼酎好みは行き場所を失っている。どうやって連れ合いのサツマイモ攻勢に対応したらいいのだ。「浦」以外の芋焼酎にこれという代替品を見いだせないでいる。いっそ、ソバに行くか、米に行くか。そういいながら、サツマイモの匂いを慕っているのである。

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