2008年10月14日火曜日

中央公論11月号特集「政治崩壊」はお勧め


 福田首相が突然辞め、盛り上がりのない総裁選で、麻生首相に替わった。支持率は低迷で、解散すらままならない。日本の政治は、何かぽかんと空虚な状態に入っているように感じる。日本はいったいどうなるのだろう。そんな政治状況を「中央公論11月号」の特集「政治崩壊」が的確に分析してくれているようだ。内容は、

1.「自己管理できな政党が日本をむしばんでいる」 佐々木毅〔元東大総長、政治学)
2.徹底討論「新自由主義か社会民主主義か」 竹中平蔵(小泉内閣で改革担当大臣、経済学)、山口二郎(北大教授、小泉改革批判、政治学)
3.座談会「劣化した政治家が失った『狂熱的なもの』」保阪正康(ノンフィクション作家、昭和史研究)、御厨貴(東大教授、TBS時事放談司会者)、井上寿一(学習院大教授、アジア外交史)
4.「麻生・小沢のバラマキ路線で大丈夫か」 与謝野馨(現・経済財政担当大臣)、聞き手:田原総一郎(テレ朝、サンデープロジェクト司会者)
5.「国家の再生を阻む中央の”統制”を解除せよ」 片山善博(前鳥取県知事)
6.「政権交代の可能性を読む」 伊藤惇夫(政治ジャーナリスト)
〔一部省略)

と、多彩である。

 総じて、どの論者も、今の自民党政治が耐用期限をとっくに過ぎ、劣化している、それが現在の状態を産みだしているとしている点で共通している。1.の佐々木論文は、読んで呆れる。政党に向かって、政治と政党のあり方のイロハを説いている。政党は一つの組織であり、組織であればそれなりの経営管理が必要だ、それが空洞化しているのが、自民党の現状だといっている。そんな私ら素人にとっても初歩的なことをこの代表的政治学者に言ってもらわなければならないのかと呆れた。政策論議より、政局だけに目を向けている日本の政治のお粗末さは、次の2.で竹中・山口も指摘している。自民党が「とにかく政権にいるために何でもあり」の政党なら、「民主党は政権を奪いたい人間の集まり」となっていると。

 面白いのは、政治についての主張が対極にあるように見える竹中と山口が討論の座につき、話すことが存外噛みあっていることだ。小泉政権が残した歪みを山口が問題にすれば、竹中は改革が不十分で徹底していないから現状があるとし、山口は改革が、無駄を放置し、削ってはいけないところばかり手を突っ込んでいると責めている。何が問題か現状認識では二人はけっこう一致している。竹中は彼が行った政策を「新自由主義」というレッテルでくくられることを拒否している。自由ではなく、ルールを強化してむしろたがをはめた、と主張する。最後には、意外にわかり合った風に見える。小泉内閣で、改革に本気だったのは、小泉・竹中以外に一握りの人だけだった、今はどんどん元に戻って行きつつあると、竹中が嘆いている。ではあの小泉政治は何だったのだろう。

 3人の玄人政治評論家による座談会(3)では、日本の政治が劣化してしまったと指摘する点では当たっているのだが、観点は古いなあ。昔の政治家は狂熱的なオーラがあり、それをもった政治家が見あたらなくなってしまった、そこに劣化の現れがあるという。安倍、福田、麻生は、いずれも政権を戦い取る意欲も、怨念も、凄みも、オーラもないままに、自民党内のご都合主義によって、次々にクビをすげ替えられただけ。それではますますダメだろうと、自民党政治をウォッチしてきた玄人たちはいいたいようだ。ダメにした原因のひとつは「お化けみたいな世論」だとする。小沢については不思議な政治家として、よく分からない、といっている。そのよく分からない小沢を、清く正しく美しい、学級会レベルの連中が支えているのが民主党らしい。

 4.で、与謝野は田原相手に、けっこう本音を言っている。福田が立ちゆかなくなったのは公明党のせいとか、総裁選で、麻生−小池だけの争いになったら、二人の議論のレベルが自民党のレベルと思われては困るから自分が立ってみたとか、麻生の景気刺激策は、ドリンク剤を飲んで一時的な疲れをとる程度とか、結局消費税アップしかこの国をまっとうにする方策はないと、いつもながらの主張。この人は財政に詳しいが、無駄を省くというところには一切目が行かず、民主党の政策にしても、麻生の景気対策にしても、何かをするには金が要りますよと、きわめてまっとうな主張。「上げ潮」についても、高い成長率は、それは望ましいが、成長率を上げるための答えがないと。

 片山はいつもの主張。霞ヶ関はポンコツ。地方がもっと自主性を与えられ、地方地方がわがこととして自分で自分のことを考えるようにならなければ、日本の将来はないと。

 まあ、こんなところで、ざっとした紹介は終わろう。この特集、時宜を得ていて、読み応えありと、お勧めするのが趣旨。

4 件のコメント:

かたやま さんのコメント...

佐々木教授のハナシに関連して申せば、自民党は民主党のことを、「なんでも政局にする」と非難しますが、私には"福田降し”も「自民党(与党)内の政局」に思えますがネ

そういう視点から見ている政治評論家は見当たらないようですが。

アクエリアン(略称:アク) さんのコメント...

どちらの党も政局中心で動いていますね。選挙→勝者なし→政界再編、というプロセスが、1,2回繰り返されて、もう少し政策中心の対立軸が明瞭になる、そんな政治になることを、私は期待します。
 それにしても、政界の現状は、マスコミ、さらには有権者の政治意識の反映でもあり、それがもっと成熟しないと、日本の政治はよくなりませんね。政治家同士の政策論争のレベルを上げること、マスコミの政治担当記者の意識を高めること、そんなことから一般人の政治を見る目を変えていくこと、・・・。うーん、難しい注文だな、

かたやま さんのコメント...

同誌上の佐藤優氏の発言でしたか「官僚は国民をバカだと思っている。そのバカが選んだ政治家も(当然?)バカである(と官僚は思っている)」とのこと。ナルホド、お説のとおりと妙に納得してしまいます。

かたやま さんのコメント...

先のコメント冒頭に>同誌上の<とあるのは間違いでした。お詫びします。
友人との待ち合わせ時間の調整のために入った図書館で、月刊文芸春秋と併せ速や読みしての混同でした。最近多いボケの症状?