(朝日新聞09/4/19-30)
・米、核再処理を断念、政策転換、高速炉も(09/4/21夕 トップ)
・核燃サイクルに影、米 再処理工場断念(09/4/22 社説面)
- 米エネルギー省(DOE) が原発の使用済み核燃料の商業用再処理施設や高速炉の建設計画を取りやめる方針を明らかにした。オバマ大統領の誕生で予想されていたことだ。米国のもともとの方針は、使用済み核燃料を再処理するとできるプルトニウムが核兵器に転用されるおそれがあることから、再処理をしないで、使用済み燃料を直接地下埋設処分するということだった。ブッシュ政権の末期になって、この方針が変更されそうになった。直接処分場の計画が大幅に遅れそうになったため、進んだ再処理技術の開発へと舵を切り直そうということになったのだった。再処理の際プルトニウムだけでなく放射能の高い超ウラン元素を混ぜて取り出して、それを専用の高速炉で燃やしてしまおうという考えだ。これなら再処理工場から出てきた核物質は放射能が高いため、核の闇市場に回ったり、素人のテロリスト集団が、稚拙ながら核爆発する装置をつくって脅すというような事態を避けることができるということだ。しかしこの技術の開発には懐疑的な見方が強かった。巨額の投資も必要だ。日本の六ヶ所村の再処理施設や高速炉もんじゅという既成技術ですら、すでに数兆円を使い、あれだけもたついている。その先を行こうという技術なのだ。オバマ政権がこれにストップをかけるのは当然の決断だろう。ヤッカマウンテンの最終処分地についても、見直し、より良い解決策を求めるとの方針を明らかにしている。原発敷地内での中間貯蔵でいいのだ。プッシュの方針変更を、原子力ルネッサンスと好感をもって受け止める動きが、わが国原子力界にあったが、さてどうなるか。既成の軽水炉型原発の建設はアメリカでも、アジア各地でも進む。その面では日本の原子力産業に活路はある。しかし核燃サイクル(再処理と高速炉)は当分現状以上には進まないだろう。ゆっくりと研究開発を続けていくだけでいいのではないか。プルサーマルは仕方なくやることになろう。外国に再処理を依頼して戻ってくるプルトニウムを消費しなければならないから。ただ、経済的には損だ。ウランは当分あるし、資源が枯渇してくれば、価格が上昇する。そのときは海水からウランを抽出すればいい。ほとんど無尽蔵だ。その技術はすでに見通しがついている。日本の原子力政策は既定路線(核燃サイクル重視)で進むのだろう。この国では大胆に方針転換するということがないから。
・もんじゅ運営 原子力機構「まだ改善途上」保安院指摘(09/4/22夕)
- もんじゅは文科省(もと科学技術庁)のもと、日本原子力機構(もと動燃)が開発中の原子炉だが、発電炉であるから、その安全性に関しては経産省原子力安全・保安院の監視下にある。トラブル続きだったので、この院による特別保安検査が行われ、その結果が検討会に示された。「重要課題への対応はまだ実施途上」という厳しいものだった。機構自身が「職員の責任感が十分でなく、保守管理でのメーカーへの依存度が高かった」と自己分析しているほどだから、この指摘も当然だろう。技術開発も保守管理も外部に大きく依存するという組織のあり方が、事故を契機に問われるようになってすでに十数年、まだ「改善途上」らしい。
・原発への意識、好転?無関心?(09/4/21 科学)
- エネルギー総合工学研究所が首都圏の500人を対象に原発について意識調査を続けている。原発を徐々にやめていくべきだとの意見はこの5年で半減しているが、無関心層も増えているとの結果。以下03年から08年への変化を示す。
「原発利用を徐々にやめていく」32.4%→15.6%
「新増設しながら続ける」6.6%→9.8%
「現状程度のまま続ける」25.8%→34.8%
安全について「不安」、「どちらかといえば不安」63.6%→48.0%
原発に「関心がない」「どちらかといえば関心がない」46.6%(ただし05年のデータ)→53.4%
この結果を、最近原発関連の大事故がなく、食糧問題などの不安が増したため「消極的な好転」となったと分析している。
なお、原発が環境問題の解決に「貢献している」、「どちらかといえば貢献」が37%、「どちらともいえない」が53%という結果は、原子力が地球温暖化対策に貢献するとの関係者の意見を、一般の人は冷ややかに見ているということだろう。
・核なき世界へ 乗り遅れてはいけない(09/4/24 社説)
- オバマ大統領のプラハでの核軍縮演説に対する日本政界の反応が鈍い。自民党内では北朝鮮のミサイルに対する防衛をどうするかとか、何らかの対抗手段を持つべきだ、というような方向へ向かっている。オバマ演説に呼応した国会決議をしようとの動きが一部の与野党議員にあったらしいが、消えてしまった。この社説もオバマ演説で「大事なのは、これが米国の安全保障戦略の一環だということ」と書いて、主張が弱い。
・核軍縮会議「来年日本で」外相表明(09/4/28 1面)
・中国の核 強く批判 米ロ軍縮に同調求める、中曽根外相(09/4/28 社説面)
- 上記のような反応の鈍さのなかで、外相がオバマ演説を強く支持する演説を、遅ればせながらしたことは評価したい。核軍縮に向けて国際社会が取り組むべき「11の指標」を示し、来年早期に核軍縮に関する国際会議を日本で開くことを提案した。中国について「戦略的方向性は不透明な一方、核兵器削減に取り組んでいない。また情報開示をいっさいしていない」と懸念を表明。米ロが減らすのだから、中国も減らすよう求める、ということなのだろう。この演説が単に言ってみただけにとどまらず、この問題で日本がリーダーシップをとっていくつもりがあるのか。
・先端研究基金 厚い土台づくりに生かせ(09/4/27 社説)
- 今度の15兆円の補正予算案のなかに、3千億円で最先端研究のための基金をつくるという案が含まれている。30人の中心研究者とテーマを選んで平均90億円の研究費を支給し、3〜5年で世界をリードする成果を上げてもらうという。社説は「選択と集中」を問題視している。私はそれはいいとして、中心研究者とテーマを誰がどう選ぶかが最大の問題だと思う。このようなテーマ選びは、旧文部省系と科技庁系とが手がけてきているが、文部省系は広く薄くになりがち(悪平等)。科技庁系には情報通の目利きがいて、意外にいい選択をしていたのを見ている。言葉は悪いが、いい博労(ばくろう)が必要。麻生首相は「最終的に私が決める」と総合科学技術会議で発言したそうだが、先端研究の目利きをできるはずがない。こういうことこそ「任せる」としたらいい。
・道路財源一般化法が成立(09/4/22夕)
- 一時はあれだけ大騒ぎしていた特定財源の一般化がやっと実現することになった。そのことを伝える新聞の扱いの小さいこと。与党だけでなく民主党なども賛成した。ところで暫定税率はどうなったのだろうか。揮発油税を道路整備に充てるよう義務づける規定が削除されただけなのだから、暫定税率なるものはそのまま存続するのだろうか。何も触れられていない。
・「先生の卵」争奪戦、人材を求めて東北に照準(09/4/27 首都圏)
- 昨年の大分県の事件が明かしたように、地方で教員になるためには、たいへんな競争試験を勝ち抜かなければならない。他方東京、神奈川などの首都圏では教員に優秀な人材を獲得するのに苦労している。東京も横浜も東北地方の各県に出向いて求人に躍起になっているらしい。ちなみに教員試験の倍率は、09年度に東京:2.5倍、横浜市:2.2倍、川崎市2.1倍などとなっている。他方、東北地方では、仙台市:7.4倍、青森、岩手県では10倍台、秋田県となると22.2倍にもなる。首都圏からの勧誘に対して、秋田市の女子学生は「秋田で試験に受からなかったら、関東で教員として技量を高めてから地元に帰ってもいいかな」と語っている。茨城県にいてよく分かるが、教員という仕事は地元志向なのである。親子代々学校の教師という家庭が、地元の名士として尊敬されているのを見かける。
0 件のコメント:
コメントを投稿