(朝日新聞、09/2/16-23)
中川全財務・金融相がG7閉幕後の記者会見で「もうろう状態」で醜態をさらしたことについて、麻生首相の対応が鈍かったことは、さんざん叩かれている。私は新聞を見直してみて、新聞の反応も同じように鈍かったのではないかと疑っている。朝日新聞の記事を時間で追って見るとこんな具合である。
・閉幕後の記者会見は2月14日午後4時頃(現地時間、日本時間では2/15、午前8時)。
・朝日新聞の第一報は、2/16朝刊、社会面。中川財務相会見、質疑かみ合わず、G7後、眠気こらえ? 一日遅れの報道が、社会面の小さな記事(2段、二十数行、1段の小さな写真付き)でなされている。眠気をこらえている様子で、記者の質問への答えがかみ合わなかった。同行筋は「一時はどうなるかと思ったが、何とか答弁は保ったようだ」とのんびりした記事。そもそも社会面扱いとは、新聞社にも危機感がなかったのではないか。
・第2報。2/16夕刊、第2面。「自己管理を」「即刻クビ」、財務相会見、与野党から批判。これも5段組みとはいえ、2面の比較的扱いの軽い記事。政府は風邪薬のせいにし、一部は「あれはきつい」とのコメント。最後に鳩山民主党幹事長の「国益を損なう破廉恥な行為」とのコメント。
・第3報。2/17朝刊、第1面。野党、中川財務相問責へ、もうろう会見、首相は続投指示。このあたりからやっと麻生政権にとって致命傷になるかもというニュアンスの報道となった。同時に「海外メディアが酷評」という見出しで、米、英、伊、露、韓、中などの嘲笑的な酷評を伝えている。外国での反応に、やっと朝日もこれはたいへんな事態だと目覚めたようにも思える。
・2/17社説「中川財務相、この大臣で大丈夫なのか」。どちらかというと、事実と海外などでの反応を伝える程度で、新聞としての主張はまだ弱い。辞めよ、とまでいかず、「このままとどまっても茨の道」という程度。
・2/17夕。中川氏「一生懸命やる」、診察で国会欠席、民主反発。まだこのあたりでは、辞めることになるとの推移を予想していない記事。
・2/18朝刊トップ。中川財務相辞任、首相の責任 野党追及、予算後退陣に現実味。いったん衆院通過後の退陣を表明したが、野党各党が参院に問責決議案を提出し、国会への影響が避けられなくなったため、即日辞任に転じたことを報じた。
・2/18社説「財務相辞任、政権の体をなしていない」。「当時の事情や本人の意図がどうあれ、政治は結果責任だ。辞任は当然である。それにしてもこの決断がなされるまでの右往左往ぶりには、開いた口がふさがらない」。「首相自身の判断の甘さ、緊張感の欠如は隠しようがない」。オピニオン・リーダーとしての新聞社の判断もどうだったのか。
以上拾ってみたの一連の経緯を見ると、新聞社の扱いに、同行記者団がつるんでいるがゆえの、報道と判断の甘さを感じてしまう。その後明かされた事実によると(2/191面、「中川氏自らワイン注文」会見前昼食の同席者、2/20社会面、中川前財務相の「もうろう会見」ローマ2日間、何があった)、記者会見前の昼食に何人かの新聞記者が同席し、飲酒していたことが、歯切れの悪い書き方で明かされている。朝日新聞記者は同席していなかったらしいが、同業者への遠慮が見え見えである。
そもそも、記者会見の場にいて、どの社の記者も、異変を問題視せず、事態の推移を漫然と見ていたのはどうだったのか。そのうえ「眠気こらえ?」という程度のレポートしか本社に送らなかった記者のセンスを疑う(これについては、09/2/23、池上彰の新聞ななめ読み、記者は何をしていたのか?)。世界中に放映されたテレビ画面を見て、本社のデスクも、たいへんな事態だと直感し、その後の推移を予想できなかったのか。
私も現職時代、今回ほどの重要会議の際ではないが、大臣の海外出張への随行(随行者の随行という程度の)、同行記者団との会見などを経験したことがある。ある種の外遊気分が大臣側と記者団との間にかもされ、政府対報道側の緊張感が削がれるようなのである。そんな雰囲気が今回の突発事にシャープな対応を鈍らせたのではないか。
ほかの切抜もあるのだが、今回は上の件だけで、次回回し。
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