2009年3月6日金曜日

漢字や言葉の話題(切抜16)

(朝日新聞 09/2/16-23、その2)

漢字復権 韓国沸く(09/2/19 国際)
ー ハングル使用を原則としていた韓国で、漢字が復活しつつある。学校教育で漢字を学ぶ機会は、高校の選択科目「漢文」しかなかった。一部の小学校で課外授業として行われていたが、最近では小学校から漢字教育が復活しそうな動向。中国や日本とのビジネスの現場で必要とされているとか、漢字表記の方が理解力・思考力を増すとか、過去の文書を読めないとか、いろいろな理由があるらしい。日本で文書が全部ひらがな表記になったとしたらどうかと、考えてみたらその不便さが分かる。たとえば「電気」、「伝記」、「転機」は同じ「チョンギ」と読む。韓国語の7割は漢字由来で、漢字表記した方が理解しやすい。例:「カムサハムニダ(ありがとう)」=「感謝ハムニダ」。採用試験に漢字の試験を行う企業があり、政府公認の漢字検定試験もあるとか。ハングル化政策は民族意識の高まりからだった。国際化の中で見直しが行われるのはいいこと。日中韓が漢字文化を共有するのは望ましい。

漢字の変容、「懐かしい道連れ」とともに (高橋郁夫〈論説顧問〉、09/2/23 オピニオン)
- 「洋の東西を問わず、文字は時に磨かれた美しさと厳しさを備えた道具であり、懐かしい道連れだ。漢字の文化圏にある国々や地域は、互いの言語や国のありようの違いと特質は尊重しながら、この道連れとのこれからの付き合い方を考えてみるのも大事だろう」。パソコンで文書を書くのが多くの人にとって普通になり、その際ローマ字変換を使うことが多い。(1)頭の中で日本語の文を思い浮かべ→(2)ローマ字でキー入力→(3)変換・修正という作業が行われる。このことが、漢字文化を変容させているのではないかと筆者は心配げに書く。どうだろうか。自分の場合を考えてみると、(1)、(2)という段階は、日本語を思い浮かべ、ペンで文字を書くという作業同様、ほとんど無意識に行われていて、ローマ字を思い浮かべているという自覚はない。むしろ外来のカタカナ語を書くとき、時おり違和感がある程度である。ローマ字変換入力の普及が、日本語のローマ字化とか、英語にせよなどという、一部のグローバル化論者を勢いづかせる心配など無いと思う。

言語と思考 遅さの技法 (中山元〈哲学者・翻訳家〉、09/2/21夕 文化・エンタメ)
- 思考は言葉によって紡がれる。言葉のうちに思考は育っていく。だから他人の思考を理解することは、その人の言葉のうちで呼吸している思考を理解するということ。長い時間をかけて言葉となったテキストの上を、読むものの目は高速で滑走してしまう。思考を読み解くためには「遅さ」ということが重要。そのための技法。(1) 朗読して、録音して、聴く。(2)翻訳してみる(日本語なら他の言語に)。こうして思考を「遅らせる」ことで、他人の思考が、自分の思考と絡み合ってくる。「遅く考える」ことが大事だと。これはわが意を得たりという指摘。私は考えるのにとても時間がかかる。

首相の言葉、大平正芳氏に学ぶこと (若宮啓文〈コラムニスト〉、09/2/16 オピニオン)
- 首相の言葉が軽くなった中で、思い出されるのは大平元首相である。現職時代には「アー、ウー首相」とからかわれていた。言いよどみながら適切な言葉を探していて、発言を文章にすると、無駄のない的確な表現になっていた。言葉に重みがあった。言葉だけではない。責任のとり方にも重みがあった。「濡れ衣を着せられると、おれははなはだおもしろくない」と、責任転嫁などしなかった。三木内閣時代の蔵相だった大平は、オイルショックの後遺症で税収が伸びず、補正予算のため赤字国債発行に追い込まれた。誰もがやむをえないと見ていたが、大平は悩み抜き、「この後始末は一生かけても自分がしなくては」と思い詰めたという。大平が今、麻生首相の立場にいたら、郵政問題について「ぬれぎぬ」などといわず、こういったのではないかと、若宮は書く。「郵政民営化の決定には悩みもしましたが、総務大臣として責任の一端を担ったのは間違いない。だからこそ、その行方を誤らせた罪は万死に値する。その思いでいま、直すべきところは直すという重い責務を感じているのです」と。

本の全文検索 波紋、米グーグル ネット公開へ準備 (09/2/23 2面「時々刻々」)
- グーグルが勧めてきた書籍本文のデジタル化について、米国の作家協会などが著作権侵害と訴えていたが、和解が成立する見通し。これまでのデジタル化の補償金を払う。ネットで公開する書籍へのアクセス権料や広告費などの収益の63%を著作権者に支払うなど。日本の作家も拘束されるらしい。「集団訴訟」という制度上、和解は原告だけでなく共通の利害関係全員に及ぶらしい。日本の作家からすると寝耳に水の結果だろう。現在の音楽配信と同様、本の内容がネット上で有料利用が進みそう。
 この記事には触れてられていないが、すでにアマゾンは、キンドルという電子ブックリーダーを発売している。その改良版kindle-2が最近発売され、米国では実用化段階に入ってきた。私にとって関心事は、iPhoneがリーダーの代用になること(現在のところ米国のみ)。日本にも「青空文庫」などがあるが、少数の古典的な作品など(著作権の消滅したもの、無料で公開したもの)に限られている。米国の場合、最新の出版物までもがネット配信される(もちろん有料、ただし最初の部分は、現在一部で行われているように「立ち読み」できるらしい)。

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