2009年1月27日火曜日

お年玉は子どものためになるか(切り抜き11)

(朝日新聞、09/1/16-20)

お金、苦労せずに受け取る事は問題(09/1/16、第2茨城、きょういくスクエア、のびる学園長、渋谷照夫)
ー 日本のお正月はお年玉抜きにして語れない。年長者は誰も問題を感じているらしいが、正面切ってそれを問題にする人はあまりいない。この学園長さんは、20年前に、お年玉の習慣は子どものためにならないと気づいて、それ以来自分のうちではあげることももらうことも止めていると。かわりにお金で得ることのできない何かの「体験」(そば打ちとか)を一緒にすることにしていると。あげるほうは愛情・関心をうまく表現できずにお金で代替している。金額をどうするか気を使う。受け取るほうは年一度の大金を当然とする。お年玉に問題を感じている親もいよう。親ですらできない荒っぽい消費を子どもができてしまう。なんだかおかしい。お金を苦労せずに得られる経験はよくない。私は消極的だが、妻は正月にやってくる習慣のなくなった孫たちになにやら送金しているらしい。

過激な「家訓」に従順に成長(「天才の育て方」写真家蜷川実花のママ、宏子さん、09/1/17"be新聞”)
ー 父親の蜷川幸雄が有名になり、金回りがよくなりだしたころ、子連れでおすし屋に行ってカウンターに座った。子どもが「中トロ、うに、いくら」と注文をするのを見て、幸雄は、この頼み方は子どもが勘違いするおそれがある、これからカウンターはやめようか、といいだした。その時に実花がいうには「どんな男性と結婚するか分からない。その人の給料次第ではカウンターでおすしなど食べられないかもしれない。だから今はここで食べさせて」。回転寿司がなかった時代のことだ。幸雄が娘に言い渡した過激な家訓なるものも面白い。「出来るだけたくさんの男と付き合え」とか「男に騙されるな。騙せ」など10項目。「過激に生きろ」とも。

高速、首都・関西500円、地方1000円(09/1/16 政策)
ー 休日限定、2年間の値下げ案。財源はどこにあるのか。高速路の割引の原資は政府が出す。第2次補正に5千億円が計上されている。税金で賄うわけだ。予想以上に利用者が多いとどうなるのだろう。ETCを新たに設置する助成もする。通常2万円かかるのを5千円にするという。これは高速道路交流推進財団なるものがあって、その保有資産から数百億円を工面するという。有料道路代金がとても高いと思っていたが、ちゃんと溜め込んでいたのだ。この財団の幹部は国交省と道路会社からの天下りに違いない。私は民主党の高速道路無料化に賛成している。

「対テロ戦争は誤り」英外相、逆効果と指摘(09/1/16 国際)
社説「対テロ戦争、どこが間違いだったか」(09/1/20)
ー 9.11以降の米国は「対テロ戦争」を基本として、外交安保戦略を進めてきた。その戦略のもっともよきパートナーだった英国の外相が、間違いだったと言いだした。2年前から「対テロ戦争」という用語を使わなくなっていたが、今度ははっきり「誤りだった」と言ったのは大きい。テロは世界各地で多様な事情から発生している、それを十把一絡げにして、軍事力で解決しようとする戦略は間違いだった。かえってテロを拡散し、英米に対する反感を募らせてしまった。オバマ大統領の誕生で、米国の戦略も見直されていくことだろう。小泉政権以来、日本も「テロとの戦い」への国際的連帯を旗印に、自衛隊を無理して出したりしてきた。日本政府も「テロとの戦い」との考え方は間違いだったとはっきり言明すべきではないか。

社説「かんぽの宿、筋とおらぬ総務省の横やり」(09/1/18)
ー 郵政民営化を進めた民間メンバーの宮内義彦のオリックスが、かんぽの宿を一括譲渡を受けることに、鳩山総務大臣が待ったをかけた。「出来レース」と見られかねないというわけだ。国民には受けがいい「待った」だが、めずらしく朝日新聞は反対している。このところ朝日の論調はずいぶん変わってきたようだ。消費税増税にも、時期明記の付則にも賛成している(09/1/17社説「消費税の扱い、付則に明記し決意示せ」)。この件への賛否は別にして、現実的にことの条理を論じる方向への朝日社説の変化はよしとしよう。

就職漂流、博士の末は(09/1/18 明日を考える、新学歴社会、選択のとき)
ー 博士号をえたものの就職できず、あちこちの任期付きの職を転々とし、40代になっても定職なしというような「高学歴ワーキングプア」が問題となっている。このポスドク問題は昔からあった。しかし先進国の中で日本は博士の数は少ない、知的生産・創造こそが日本がこれからのグローバルな競争に生き残っていくための基礎体力だと、博士の数を増やしてきた。博士課程在学者は91年に3万人ほどだったのが、07年には7万5千人と、2.5倍になっている。しかし就職先は増えていない。大学、公的研究機関、企業が主な受け皿だが、前の2者は定員を増やせず、任期付きのポストだけを増やしている。米国では1、2回のポスドクの経験を経て、定職に就ける機会が多いが、日本ではそうはいかない。企業側と求職者とのミスマッチがある。年齢とともに専門性が狭まって、企業側の求めに応じにくくなっている。どうするか。博士過程の定員を絞るべきだという論者もいる。しかし、日本には新しい技術の芽を産み出す人材は、もっと必要だ。日本は研究者の育て方が下手なのではないか。学位取得者の就職を容易にする、社会慣習を含めた環境改善が必要だ。不況の時代にあってこそ、将来の成長の種になる研究プロジェクトへの国家投資を増やし、無駄になっている人材を活用すべきだろう。

脱・出来ない理由(09/1/19夕、「窓」村上知博)
ー 「2050年までに日本は食糧とクリーンエネルギーの輸出国になる」との目標を打ち出したら、と提案した内閣特別顧問の大学教授がいた。役人が「そんなこと、できっこない」と反対した。出来ない理由をあれこれ並べることには長けている。役人や科学技術政策の立案に当たる高名教授たちの体質だ。しかし大不況の今、オバマがグリーン・ニューディールを提案している今、日本でも、常識的には出来っこないほどの大目標を掲げてやってみてはどうか。上記の教授は、最近では2030年までに実現できると説いて回っているそうだ。一つ上の項目に紹介した多数の博士浪人を動員することも出来る。

柳沢桂子、本当に苦しむしに直面、生命は奇跡の重なりの上にある。「神なしの境地」が理想の生き方(09/1/16夕)
ー この人は、難病と戦いながら、サイエンスライターとして生命について、そして最近では生き方について多くの本を書いている。自分の死に直面し、宗教にも近づいた。しかし、最終的にはポンヘッファーの言葉から「神なしの境地」にいたる。「死はもっと美しいものだと思っていましたが、死ぬに死ねない人たちが、本当に苦しむ死を見て、ものすごいものだと実感」「正直なところ死についての感じ方は揺れています。でも、人間の死も散っていく紅葉と同じで、自然の中の一つの景色として眺めれば、ささやかな出来事。静かであってほしい」とも。

絡み合いカゴ形巨大タンパク質、構造解明、新薬へ期待(09/1/16夕)
ー 生体細胞中で最大(分子量約1千万)のタンパク質「ボルト」の構造を兵庫県立大、大阪大の研究グループが放射光施設SPring8を用いて解明した。どのくらい大きいかというと、たとえば血液中で酸素、二酸化炭素を運ぶ働きをするヘモグロビンの分子量が6万5千だから、その約150倍。分子を建物にたとえると、その建物の細部がどのような部品でそのように組み立てられているかが分かったということ。大きいものほど、情報量が多くなり難しい。SPring8の強いX線ビームを1分間当てただけで分かったという。ヘモグロビンの構造解明(1953年、ペルーツ)には、何年にもわたる測定・解析作業が必要だった。それが今では1分の測定で出来る。建設から利用開始時期にSPring8で働いたものとして、この成果はうれしい。これに限らず同様な成果がどんどん出ているらしい。

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