2009年1月17日土曜日

箱根駅伝は大学間経済戦争(切抜10)

朝日新聞 09/1/08-15)

箱根駅伝は「経済戦争」だ (09/1/10 be business 読み解く、生島淳)
ー 箱根駅伝ほど元気なスポーツイベントは、現在の日本ではまれなんだそうだ。スポーツに興味の薄い私でも二日にわたる実況中継を何となく見てしまう。今年の登坂区間での東洋大逆転や復路での早稲田との競り合いは見応えがあった。この記事によると、箱根駅伝に参加し、上位チームに入ることは、各大学にとって入試志願者を増やす絶好の機会なのだそうだ。出願締め切りの直前という最高のタイミングで、テレビ中継を通して学校名が連呼されることにより、受験料収入が数億円も増えるという。選手の獲得、強化に金を投じ、競い合わせる。これは表面はスポーツ、裏は経済戦争なのだ。監督さんもたいへんだ。

危うさが政治を面白くする (09/1/08 オビニオン、私の視点「民意とは何か」、鳥越俊太郎)
ー 政治家が「民意」を武器にする現象は、小泉政権から。しかし、その後の政権は民意をつかみ損ねている。民意はマスコミの扱いやで、たやすく誘導される。きわめて危ういものだ。しかし危ういものだからこそ、政治は面白い。民意を手探りしながらボールを投げ、それに手応えがあったり、逸れたりする。試行錯誤しながらボールを投げ続けるのが、民主主義のありからだろうと鳥越はいう。これに対し、「民意」の持つ危険性にもっと厳しい目を、と主張するのが、同じ欄で「『意見』より『気分』に近い」というタイトルで書いている佐藤卓巳。「意見」は自分で考え、他人と議論を重ねてじっくりと作り上げられるもの。今いわれる「民意」はその意味の「意見」にはほど遠く、その時々の全体の空気に同化して情緒的・即時的に作られる「気分」に近い。マスコミも政治家もそれに迎合して、無責任、没主体的になっている。言語化できない世論=気分を、対話可能な「輿論」へと作り替えていく作業が重要で、それが政治ではないか。また新聞の仕事でもあると。両者の意見は対照的だが、佐藤はあるべき姿をいい、鳥越は日本の政治は所詮そのようなものだという現実に立ってものをいっているようだ。

首相と戦争捕虜 (09/1/10夕、「窓」論説委員室から)
ー 麻生首相の父親が経営していた旧麻生鉱業が、戦争中、連合軍捕虜を炭坑で働かせていた。そのことを3年前アメリカの新聞が報道したのに対し、外務省は、NY総領事館のHPで反論した。その後、事実を裏付ける公文書が厚労省で見つかり、昨年末にHPの反論は削除された。衆院本会議の答弁で麻生首相はその事実を認めた。日本ではほとんど報じられなかったが、海外では「日本の首相、親族経営の企業が戦争捕虜を働かせていたことを認める」と大きく報道された。フィナンシャル・タイムズ紙は顔写真付きで報じたという。国内外での関心の落差を示している。それ自体は違法ではないらしいが、賠償責任の裁判を起こされるなどの可能性はある。

シリーズ「感情模索」(09/1/01- 文化欄)
ー 前回紹介したシリーズの続き。残る2回分。
(6)「ファミレス現象」に幻滅。東京の輝き消え、移る関心(09/1/08)
(7)自虐という名の安全策。昇華できれば生きる原動力に(09/1/10)
誰も同じように上を目指し、ブランドものにあこがれ、聞きやすい音楽、読みやすい本、パターン化したドラマや報道などを、当然とするのを「ファミレス現象」と呼ぶらしい。ファミリーレストランの品揃えのようなものであるから。そのことに疑問を抱き、うさんくさささえ感じる若者が出てきた。彼らにとって、東京はあこがれの存在でなくなってきた。社会の潮目が変わり始めている(以上、〈6〉)。自虐してみせることで存在感を示す、屈折した自己表現(麻生首相もそうだとか)。その結果としての若年層での上昇志向のなさ。どうやら右肩下がりの時代らしい(以上、〈7〉)。このシリーズは、ふだん思いおよばなかった社会変化の兆候を指摘してくれて、興味深く読んだ。

The Globe Asahi Shinbun No.7 (09/1/12)
ー 以前から始まっていた週一の別冊が、この号から8ページものになった。新聞紙と違う真っ白な紙の印刷物で、NYTimesのSunday Magazine のようなものにしようとしているのだろうか。毎回特集号で、今回のテーマは「Changeの逆襲、オバマ、危機の中の船出」。たしかに選ばれたはいいが、オバマにとっては、難題が山ほど待ち構えているこれからがたいへんだろう。ほかに新コーナー「突破力」で、指揮者、大野和士が取り上げられている。外国で名が出ている日本人指揮者。ここ2年訪れているドイツのバーデン州立歌劇場音楽監督だった人として名を知った。

歌舞伎座、建て替えで失われるもの(09/1/14 文化)
ー 歌舞伎座が全面建て替えを前に「さよなら公演」を始めている。16ヶ月にもおよぶ「さよなら」だ。再建後は大きなビルの中に飲み込まれるらしい。歌舞伎を見せてくれる場は新しい形で再興するのだろうが、現在の外観も祝祭的な異空間も失われることだろう。この間、少なくとも1,2度は見納めに行きたい。人気が盛り上がっているようで、チケット入手が心配だ。

07年GDP、中国が3位。ドイツ抜く(09/1/15 1面)
ー 日本の2位は変わらないが、米国政府の国家情報評議会(NIC)によると、中国は15年に日本を、36年に米国を抜いて、世界一位になると予測している。そのような世界を私ら世代は見ないだろうが、一体どんなことになっていることか。

さらばレーザーディスク。パイオニア、生産終了(09/1/15 経済)
ー レーザーディスク(LD)プレーヤーが生産停止になるという。DVDや最近ではブルーレイに取って代わられ、幕引きになるのは当然だろう。私はレーザーディスクを愛好した世代だ。今でもプレーヤーは活かしているし、LDもかなりの枚数所有している。VHSなどに比べ画期的なものだった。音源としては、LPとか、ドーナツ盤はもっと前だ。さらにその前はSP。私らは音楽、映像プレーヤーの変遷を何度となく体験した世代だ。しばらく見ていないLDをかけてみるか。

政治に揺れた地学(09.1/15夕、「窓」編集員室から)
ー 戦後しばらくの間、私が物理の学徒だった時期にも、自然弁証法などという形而上学的思想が科学の上位にあるものとして、日本の科学界の一部では尊重されていた。しかし欧米流の実証科学を学んだ科学者たちはその流れを受け入れなかった。一番遅れたのは地学の分野だった。今では常識のプレート論を早くから受け入れた地学者たちは、その偏見と闘うのに苦労したらしい。大阪市立大学の藤田和夫名誉教授のことを、科学担当の尾関章論説委員が書いている。

北朝鮮核「兵器級ウラン保有」米ライス長官、見解示す(09/1/15夕)
ー 北朝鮮核問題の処理は、ブッシュ政権のもとでは不成功のまま終わることになる。その最後にあたって、ライスは「北朝鮮が兵器級の高濃縮ウランを製造か輸入し、隠していると見ている」と言い残した。「痕跡以上のものがある」としているようだが、別の筋は「ウラン濃縮は実用レベルには達していなかった」としている。一応記憶にとどめておこう。

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